幸せの隣に 君が 幸せの隣に 君が

「サナギ、ここにいたのか」
ふわふわした雲の上に座り込み、真っ白な小鳥と戯れている時に現れたのは、アルネス。
その冷静さを一層引き立たせる、すらっとした切れ目が僕を見下ろしている。と言う事は……

嫌な予感がしてそぉーっと立ち去ろうとするも、掴まれた首根っこ。
「どこへ行く気だ?えぇ?」
「い…いや、ちょっと急用を思い出して…」
「見え透いた嘘をついてる暇があるなら、さっさと今回の仕事をこなして来い!」
背後で聞こえた台詞に少しだけ間を空けてから、やっぱり我慢出来なくて軽い溜息をついてしまう。

…案の定、仕事の依頼だったか。

「どうしても行かなきゃいけない?」
「当たり前だろう」
「君が代わりに行ってくれるとか…」
「甘えるな!ほら、さっさと行け」
渋って見せるも予想通り即却下された上に、天界から蹴落とされてしまった。

逆さまに落ちていくまま、頭はこんな事を考える。
あぁ…、気が重たいな。
早く一人前の天使になりたいけれど、やっぱり…人の『終わり』を受け入れられない…。
後ろ向きな気分のまま、やがて辿り着いたのは人間界。
「えぇと…どこへ向かえばいいんだろう。アルネスったら、仕事場を教える前に突き落としてくれたからなぁ」
呟いた直後、感じた灯火。人の命を映像として見られるのは天使である証拠。
ゆらゆらと不安定に揺らめいて、ふっとした瞬間に消えてしまいそう。
あまり気は進まないけれど、そっちの方向へ飛んでみる。

バタバタと走る、何人もの足音。
ガラガラとなるストレッチャーの悲鳴。

どうやら今日の悲しみの舞台は大病院みたいだ。

空中に浮かんだまま様子を伺うと、茶髪の女の子が青ざめた顔に苦しそうな息遣い。
そんな彼女に寄り添って「藍司ちゃん!!しっかりしてよ!!」と痛い声で叫んでいるのは焦げ茶色の髪をした男の子。

心配の仕方から見て、きっと恋人同士なんだろうな
。 彼の目の前でばたんと閉じられた病室のドア。
それを見届けた後、力なさ気に廊下に備え付けてあるベンチにへたり込んだ。

「…どうして…どうして…!!」
頭をうなだらせ、ただただそう呟く可哀相な人。

人間に僕の姿が見えないのは誰もが知っている常識。
そっと隣に座り、さっき感じた彼女の命の火を探す。

元々揺らいでいたのに、今では更に小さくなってしまったかな。
強い風が拭けば一瞬で消えてしまいそうで……いや、消えてしまうんだ。

僕がここに来たと言う事は。僕が魂を迎えに来たと言う事は…。

あぁ、これだから嫌なんだ。
こうやって、誰かにとって大事な人を攫っていくような真似…自分が天使じゃなくて死神になった気分になる。

亡くなってしまった人は天国に導けるけれど、残された人はどうなるの?
皆が平等に幸せにはなれないのかな…。



しんと静まり返った空間で、ただ待ちわびてどれくらい経っただろう?
暗い気分を持て余していると、思わず転寝しちゃったんだ。
ハッと目を覚まして、彷徨っているはずの魂を探す。けれど、一向に見つからない。

それどころか、打って変わってしっかりと燃えている火を感じた。
あれれ?これは一体どういう事だろう?
とその時、がらりと開いたドア。
「もう大丈夫ですよ」
にっこり笑って言ったお医者さんに、今までどん底にいた彼は一瞬だけ止まった後、すぐに明るい顔をして。

おかしい、と思って僕も一緒に入室すると、先程の苦痛に歪む顔なんて欠片もないくらいに明るい表情をしている彼女がいた。
「藍司ちゃん…。本当に大丈夫なの?」
「うん!もう元気だよ!」
問いかけに肩を少しあげて笑った、藍司と呼ばれた女の子。

一瞬だけ息を吹き返すと言う事は結構あるけれど、こんなにも全快になるケースは初めてだ。
もしかして、嵐の前触れ?
なんて思っていると、まさかの告白。

「実はね…誕生日だからってケーキバイキングに連れて行ってもらったんだけど…ついつい食べ過ぎた結果、猛烈に気分が悪くなって」

照れくさそうに、でも何故か楽しそうに笑う恋人に対して、男の子と共に僕もキョトンとしてしまう。
と言う事は…今回は完全に勘違いしてしまった訳か。

そんな答えに辿り着いた途端、嬉しくなって笑ってしまう。
アルネスみたいに仕事に誇りを持っている天使だったら恥として受け止めるんだろうけど、僕は…。

「澪くん、ずっと待っててくれたんだよね?」
「うん。藍司ちゃんのお母さんから電話もらったから…それから今までずっと」
「誰かがあたしを待っていてくれるなんて…えへっ、すごく嬉しい!」
ほっぺたを少し赤くさせている人を見て、思ったこと。

二人はお互いがお互いの『幸せ』として隣にいる。
それっていいね。自然であり、だけど結構難しい事なんじゃないかな…。
幸せそうな二人をずっと見ていたいけれど、そろそろ帰らないと。
アルネスには何て言い訳しようかなーなんて考えながら、窓から飛び立った瞬間に聞こえた声。

「こんな一日になっちゃったけど、あたしを待っていてくれた人が二人もいるなんて…本当に幸せだよ!」
「え?」
澪くんと呼ばれた男の子と一緒に、僕も空に同じ疑問符を投げてしまう。

そっと振り向くと、まっすぐにこちらを見ている女の子の口がこんな風に動いたんだ。 「ありがとう」って。

ふんわりした心。晴れ渡った空みたいに、澄んで。
皆、僕は人間より人間くさい所があるって言うけれど、そういう自分を嫌いじゃなくなったな。

たまには…こういう一日もいいね。





「サナギ!!仕事を放ったらかしてどこへ行ってたんだ!?俺が代わりに魂を回収してきたからいいものの…」
こういうのを人間は期待外れって言うのかな?いや、予想通りかな?
天界で僕を待っていてくれたのは優しい恋人でも幸せでもなく…、大激怒しているアルネスだったんだ……。

END



朱真露さん宅のキャラ、藍司ちゃん&澪君とうちのキャラサナギ&アルネスのコラボ小説を朱真露さんが書いてくださいました!!
私の“キャラのコラボストーリー”という何とも無謀かつあつかましいリクエストに応えて下さったんですよ!!
まず自分、キャラ設定だけで本編がないって所で無理難題を言うなって感じですが(ホントそれだよ・・・)
快く承諾してくれまして、しかもサナギ視点で書いてくださってもう何というか申し訳ないぐらい嬉しくてありがたいです!(コメント下手すぎ;)
しかも驚いたことにサナギやアルネスの性格が私が考えてたのと殆ど同じなんですね(凄)
二人のやり取りとかもうそのまんまで・・・プロフィールの方にこの話加えたいくらいです・・・///
それのお礼で描いた挿絵みたいなのがこんなので申し訳ないです、ハイ。
朱真露さん、コラボストーリー書いて下さってどうもありがとうございました☆